空襲の目標になった日本の180都市

カリフォルニア州サンフランシスコ
郵便局長気付,陸軍軍事郵便局234
第20航空軍司令部                職権:第20航空軍司令官
  A-3部                        イニシャル:       
                             日付:1945年7月21日 
   
                                1945年7月21日
 
主題: 中小工業都市地域への攻撃
宛先: 作戦担当,副参謀長
 
  1.大阪・尼崎地区に対する6月15日の攻撃を以て,当部隊は統合目標部によって区画され,第20航空軍によって優先目標と認められた最初の10個の「指定工業集中地区」を含んだ全ての市街地の破壊・損壊を実質的に完了した.さらに本来33あった「指定工業集中地区」のうちの,残りの23を含んだ市街地にも,完全または重大な破壊・損壊を与えた.
 
  2.これらの攻撃の予備的な分析は,それが抵抗し戦い続ける日本人に最も手痛い打撃であったと考えられることを示した.その上に,市街地焼夷弾攻撃の破壊効果というものは累積的である.この種の攻撃が次々に成功することは,それ以前の全ての攻撃から得られた効果を増大させる.一時に集中して攻撃するときには特に効果がある.そこで,もっと小さな都市に対して焼夷弾攻撃を続け,1回の攻撃にいくつかの都市が破壊できるならば,夏のいわゆる「悪天候」の間に,われわれが採用すべき極めて効果的な攻撃法が得られるであろう.前例のないことだが,その期間に,敵の戦争継続能力に決定的な打撃が与えられるであろう.
 
  3.結局,主要な180の日本の市街地が(人口に基づいて)選び出された:
 
 1. 東京  46. 宇部  91. 今治   136. 石巻
 2. 大阪  47. 青森  92. 松江   137. 日田
 3. 名古屋 48. 福井  93. 沼津   138. 土浦
 4. 京都  49. 川口  94. 宇治山田 139. 彦根
 5. 横浜  50. 秋田  95. 宇和島  140. 鶴岡
 6. 神戸  51. 千葉  96. 小田原  141. 池田
 7. 広島  52. 盛岡  97. 小松   142. 玉野
 8. 福岡  53. 久留米 98. 弘前   143. 松坂
 9. 川崎  54. 若松  99. 岩国   144. 上田
10. 呉   55. 宇都宮 100. 船橋   145. 飾磨
11. 八幡  56. 旭川  101. 佐賀   146. 川内
12. 長崎  57. 前橋  102. 東舞鶴  147. 能代
13. 仙台  58. 桐生  103. 鳥取   148. 立川
14. 札幌  59. 戸畑  104. 半田   149. 西条
15. 静岡  60. 岡崎  105. 熊谷   150. 八代
16. 熊本  61. 日立  106. 米沢   151. 伊丹
17. 佐世保 62. 延岡  107. 尾道   152. 下松
18. 函館  63. 大分  108. 足利   153. 三島
19. 下関  64. 長野  109. 福島   154. 宮古
20. 和歌山 65. 八戸  110. 若松   155. 佐伯
21. 横須賀 66. 松本  111. 明石   156. 新宮
22. 鹿児島 67. 高崎  112. 米子   157. 萩 
23. 金沢  68. 一宮  113. 直方   158. 浜田
24. 堺   69. 山形  114. 飯塚   159. 倉敷
25. 尼崎  70. 津   115. 岸和田  160. 酒田
26. 小倉  71. 清水  116. 小野田  161. 福知山
27. 大牟田 72. 大津  117. 瀬戸   162. 八幡浜
28. 岐阜  73. 長岡  118. 豊中   163. 敦賀
29. 浜松  74. 宮崎  119. 諌早   164. 唐津
30. 小樽  75. 水戸  120. 平塚   165. 高山
31. 岡山  76. 吹田  121. 新居浜  166. 栃木
32. 新潟  77. 別府  122. 釜石   167. 島原
33. 豊橋  78. 釧路  123. 桑名   168. 高田
34. 門司  79. 八王子 124. 鎌倉   169. 平 
35. 布施  80. 奈良  125. 岡谷   170. 七尾
36. 富山  81. 銚子  126. 伊勢崎  171. 舞鶴
37. 徳島  82. 大宮  127. 津山   172. 柏崎
38. 松山  83. 浦和  128. 芦屋   173. 洲本
39. 西宮  84. 高岡  129. 三原   174. 中津
40. 高松  85. 防府  130. 徳山   175. 海南
41. 室蘭  86. 都城  131. 川越   176. 館山
42. 高知  87. 市川  132. 山口   177. 飯田
43. 姫路  88. 郡山  133. 藤沢   178. 丸亀
44. 四日市 89. 福山  134. 帯広   179. 多治見
45. 甲府  90. 大垣  135. 三条   180. 熱海
 
選び出されたうちの初めの方の9都市については,次のことを念頭に置かなければならない.3都市(横浜,神戸,川崎)は,以前の攻撃(#186;26,43,188;68)によってすでに破壊した.1都市(名古屋)は,以前に5回の攻撃(#17,41,44,174,176)をしたので,これ以上焼夷弾攻撃をする必要はない.2都市(東京と大阪・尼崎)は,それぞれ5回および4回の攻撃(#38,40,67,181,183;42,187,189,203)をしたので,それぞれあと1回ずつ最大努力の攻撃をするだけでよい.また2都市(京都と広島)は上部からの指示によって除外された.[#は作戦任務番号]
 
  4.残りの171都市のうちから,さらに2都市 ? 新潟と小倉 ? も除外された.
 
  5.これで169都市が残ったが,そのうちの17都市は北緯39゚より北にあり,硫黄島の基地が前進基地として使えるようになるまでは,大遠距離を必要とするために,効率的に攻撃することができなかった.これらの17都市は以下の通りである:
14.札幌   78.釧路 
15.函館   93.弘前 
30.小樽  122.釜石 
41.室蘭  134.帯広 
47.青森  141.池田 
50.秋田  146.川内 
52.盛岡  147.能代 
53.旭川  154.宮古 
65.八戸       
 
  6.残りの152都市のそれぞれは,われわれのAPQ-13を装備した機によって容易に爆撃できるかどうかが,レーダーの専門家によって検討された.この結果,夜間や悪天候化下の攻撃からは,少なくとも次の15の都市がさらに除外されることになった.
 
  11.八幡   76.吹田  
  12.長崎   86.都城  
  35.布施   88.郡山  
  49.川口  109.福島  
  53.久留米 110.会津若松
  54.若松  117.瀬戸  
  59.戸畑  165.高山  
  69.山形    
    
さらに調べれば,まだほかにも出てくるであろう.
 
  7.次に残りの137の都市のそれぞれについては,以下の見地から徹底的な調査が行なわれた:
    a. 密集性・延焼性.
     これは最も重要な点である.なぜなら,日本の都市に対する焼夷弾攻撃の効率や成功率は,日本の工業や戦時労働者が占める広い地域が,火によってどれだけ破壊または崩壊されるかにかかっているからである.さらにこの点を強調すれば,重要な工場を有してはいるが,すでに焼夷弾攻撃が成功していて,現在では全体として密集性・延焼性がなくなっている地域に対して,焼夷弾攻撃を要求するという落とし穴を避けられるであろう.
    b. 軍需工業地区の範囲.
     この中には,(1)延焼性の高い地域の中または近くにある地区,および(2)延焼性の高い地域の外にあるが,その都市の中または近くにある地区を含む.
    c. 水陸の輸送施設の範囲.
     もともと劣っていた日本の輸送交通は,過去6か月間にますます弱体化した.過去の焼夷弾攻撃とともに,当部隊の機雷投下の努力は,帝国内の輸送事情を深刻なものにした.
  
  8.このようにして,最後に各都市の優先順位が決められ,各都市に対する焼夷弾攻撃が始まり,レーダー映像と写真偵察が要求された.時にこれらレーダー映像や偵察写真の入手に遅れがあれば,ある都市の攻撃ができずに,別のもっと重要でない都市が破壊されることもあるかもしれない.しかしそれは,計画全体の遂行には影響しないと思われる.
 
              署 名
              大佐,参謀幕僚      
              A-3担当,参謀長補佐
              WILLIAM H. BLANCHARD
      
配布先
 6 - 作戦担当,副参謀長
 1 - A-2報告用
 1 - A-2
 1 - レーダー係
 1 - OAS
 1 - 第33統計管理部
30 - A-3
 
出典:奥住喜重,工藤洋三,桂哲男,「原爆投下報告書」,東方出版,1993年